公務員から民間企業へ転職した424件のうち、「なぜその職種を選んだのか」を書いている293件を読み、理由を分類しました。どの経験がどの職種につながっているのか、実際の記録から整理しています。
公務員は、どうやって転職する職種を決めているか
最も多かったのは「担当していた分野が、そのまま仕事の対象になる」という選び方で、97件(33.1%)でした。やりたいことから決めるのではなく、いま持っているものが値段になる場所を探すという順序です。
| 理由 | 件数 | 割合 |
|---|---|---|
| 担当分野がそのまま仕事の対象になる | 97件 | 33.1% |
| 相談・支援の経験が活きる | 40件 | 13.7% |
| 制度・法令の知識が要る仕事 | 32件 | 10.9% |
| 予算・会計の経験が活きる | 29件 | 9.9% |
| 発注者・監督する側の経験が活きる | 27件 | 9.2% |
| 公共向けの顧客に売る仕事 | 14件 | 4.8% |
| その他 | 54件 | 18.4% |
注目すべきは、「未経験でも入りやすいから」という理由が4件(1.4%)しかないことです。入りやすさで選んだ人はほとんどおらず、大半が「自分の経験が最も高く売れる場所」から逆算しています。
なお、掲載事例のうち314件は未経験からの転職です。未経験でありながら、経験を軸に選んでいる——この一見矛盾する状態が、公務員の転職の特徴です。職種は未経験でも、そこで使う知識は未経験ではない、ということになります。
どの経験が、どの職種につながっているか
分類ごとに、実際の記録から抜き出します。
制度・法令の知識が要る仕事(32件)
- 介護領域のサービスを作る会社で、制度を熟知した人間が事業設計に入る意味は大きいと考えました医療・福祉分野へ
- 医療機関に導入するサービスなら、制度の理解が営業の武器そのものになると考えました法人営業へ
- 法人運営の管理部門なら、制度と監査の知識をそのまま使えます管理部門へ
制度を「守る側」にいた経験が、制度を「前提に商売する側」で必要とされる、という構図です。規制のある業界ほど、この転用が効いています。
発注者・監督する側の経験(27件)
- 発注者の考え方を知っている技術者は現場で重宝されると、面接で複数社から言われました。経験がそのまま値段になる職種です施工管理・技術職へ
- 労務管理の設計を企業と一緒に作る仕事で、監督官の知識がそのまま価値になります労働基準監督官から
- 管財で土地や建物を見てきた経験が、出店候補地の調査と近いと考えました不動産分野へ
これは公務員に特有の資産です。民間側から見ると「発注する側の判断基準を知っている人」は自社で育てられません。年収が上がりやすい職種が、この分類に集まっています。
相談・支援の経験(40件)
- 人の人生の分岐点に立ち会う仕事だと聞いて惹かれました。窓口で市民の相談に乗っていたときの手応えと、方向が同じだと感じていますキャリアアドバイザーへ
- 進路の相談に乗ってきた経験を、そのまま仕事にできると考えました。相手が生徒から求職者に変わるだけだと捉えています教員から
- 学校向けサービスの導入支援なら、現場を知っている強みがそのまま活きると考えましたカスタマーサクセスへ
件数は2番目に多い一方、この分類に集まる職種(キャリアアドバイザー、カスタマーサクセス)は年収が下がりやすい傾向があります。やりがいの近さと条件の良さは、必ずしも一致していません。
予算・会計の経験(29件)
- 税務の知識をそのまま活かせて、かつ経営者と直接話せる仕事だからです税務職から
- 財務分析の力を直接使える職種で、これまでの経験が最短距離で活きると考えました財務専門官から
簿記などの資格を取ってから動いた記録が多く含まれます。知識の裏づけを外から見える形にすると、書類が通りやすくなるという実務的な話です。
「知識が使えること」と「その仕事ができること」は別
掲載事例には、選び方を振り返って率直に書いている記録もあります。
- 都市計画の知識がそのまま使えると思い、不動産の法人営業を選びました。いま振り返ると、知識が使えることと営業ができることは別問題でした土木職から法人営業へ
- 結婚という節目に立ち会える仕事に惹かれました。営業であることの意味を深く考えていませんでした個人営業へ
どちらも、知識の転用だけを見て、仕事の性質を見ていなかったという指摘です。「経験が活きる職種」を探すときは、その職種が日々何をする仕事なのかを別に確かめる必要がある、ということになります。
転職後に何が想像と違ったかは、公務員から転職して感じたギャップにまとまっています。
職種を決めるときの順序
掲載事例から読み取れる進め方は、次の順です。
1. 担当してきた分野を、業務名ではなく「何を判断してきたか」で書き出す。「用地買収を担当」ではなく「地権者と条件を詰め、いくらで合意したか」まで分解すると、転用できる先が見えてきます。
2. その判断を必要としている業界を探す。制度を扱う業界、行政に売る企業、発注される側の企業。公務員の経験が値段になるのは、この3つに集中しています。
3. その職種が日々何をしているかを、別に確かめる。知識が使えることと、その働き方が続けられることは別の問題です。
民間側が実際に何を評価したのかは民間企業が実際に評価した公務員経験、未経験の職種に移れるかは公務員から未経験の職種へ転職できる?で扱っています。
この集計の前提
分類は本文の記述をもとに行っており、1件につき1つの分類に寄せています。複数の理由が書かれている場合は、最初に挙げられているものを採用しました。
また、本サイトに掲載しているのは転職した人の記録です。選び方がうまくいかず転職に至らなかった人は含まれていません。

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